ご挨拶

福田 栄香(千栄子改メ) FUKUDA EIKA
日本の楽器の代表格として誰もが思い浮かべる箏と三味線。
地歌箏曲(生田流筝曲)とは、正にその「箏」・「三味線(三弦)」そして「歌」で織なす美しい日本の伝統音楽です。
我が家は祖父母の代よりその道を生業としており、私は幼い頃から箏や三味線、尺八の音が当たり前という環境に育ちました。
師である父を尊敬し、その音楽に魅了され稽古にも励みましたが、同時にその家業は、1964年生まれの私にとって青年期に社会と接する中で疎外感、違和感も覚えさせました。
芸術全般に対し寛大な理解を併せ持った両親は、私が高校を卒業後演劇の道に進むことを認めてくれました。
別の世界で生きるプロの仕事は新鮮で、私の心に素直に響きました。
人々に感動を与えたい、その一心で皆がひとつになり、厳しい時間を共有し、素晴らしい舞台を創り上げようとする彼らのエネルギーと信念は、その後の私に大きく影響するものとなりました。
学び受けた衝撃と感動は、なんと言うことか、それが大きくなるにつれ、幼い頃から見続けてきた父の舞台姿と重なり合って行くのです。
幼少期から叩き込まれた芸に対する姿勢と師(親)からの教えは、自然に私の体内に、そして脳裏に刻み込まれていたからこその結果なのでしょう。
師から弟子へ、親から子へと受け継がれて行く歴史、それこそが伝統を紡ぎ出すと、身を以って感じます。
5年間という歳月を経て、私は家業に戻りました。
今、私は、三ッの音会三代家元として、地歌箏曲演奏家として生きています。
私達だからこそ奏でることが出来る『日本の音』。
その独創性に溢れる音楽に神秘を感じ、改めて自分の歩んでいる芸の道に対しての愛情が膨らみます。
そして、国内は勿論、国外での活動を重ねるほどに、更にそれを伝えて行くべき使命感のような想いに駆られます。
世界が身近になり、いつでも各国の優れた文化や芸術に触れ、感動することが出来るようになった現代だからこそ、改めて見つめ直してみたい日本。
大切に受け継がれてきた素晴らしい我が国の伝統の多くは、そのひとつひとつが私達の心を豊かにし、生きる勇気を与えてくれるものと信じています。
このHPが、皆様と美しい日本文化とを繋ぐ道標のひとつとなれば嬉しく存じます。